自分の研究を一から作り上げていく
- 朱俊宇 さん
- 航空宇宙工学専攻博士前期課程2年生(2021年9月時点)
常熟市梅李高級中学(中華人民共和国江蘇省蘇州)・日本大学理工学部航空宇宙工学科出身
航空宇宙工学科に進学したきっかけは?
私は中国出身ですが、自分の視野を広げたいという思いから留学を決めました。日本を選んだのは、日本の文化が好きだったことや、日本の技術に興味があったことが理由です。日本の家電製品や車は品質が良いのですが、このような品質の高い製品にどんな技術が使われているのかを知りたかったのです。
それで日本に来て、日本語学校在学中にいろいろな大学のオープンキャンパスに参加しました。実はもともと航空宇宙が好きというわけではなかったのです。それでも航空宇宙工学科は、鳥人間(※1)や衛星開発(※2)など、学生が主体となって活動しているのが印象に残りました。また授業のカリキュラムもおもしろそうで、興味を持ちました。
大学院へは、学部3年生修了から飛び級という形で進学しました。3年生の途中で担任の先生と面談し、飛び級制度(※3)のことを教えてもらいました。それから残りの3年生の期間を一生懸命勉強して、飛び級の条件をクリアすることができました。もともと大学院を目指すつもりではいました。もっと勉強を続けたかったからです。一方、飛び級で博士前期課程に入学しますと、4年生を飛ばすため、研究する期間は実質一年短くなります。結局は、早く社会に出て活躍できるようになるのもいいなと考えて、飛び級にチャレンジすることにしました。
大学生活をどのように過ごしている?
一日の大半は研究に費やしています。バイトも少ししましたが、研究を優先しています。学部生時代も基本的には勉強していました。とは言え、趣味もあります。登山が好きで、富士山に挑戦したこともあります。残念ながら悪天候で登頂できなかったので、いつか再挑戦したいです。
一人暮らしで、たまには自炊もします。実は料理が下手です!
航空宇宙工学科での学びについて
一番大変だったのはやはり日本語です。それから時間管理もあります。学部生時代は特に、実験のレポート提出に追われていました。授業内容は難しいこともありましたが、大体はわかりやすかったと思います。
学部生のときに受講した講義で印象に残っているのは航空機構造設計製図(※4)です。この講義では一グループで一つの機体を設計します。私は5人のグループでした。取り組んでいてとても楽しかったのですが、それだけではなく、作業を効率よく進めるため、ただの友達同士のやり取りではないコミュニケーションの方法も学ぶことができました。
大学院の講義では、英語の論文を読んで発表資料を作って発表するという課題にも取り組みました。いろいろな文献を探して読んでみること自体、おもしろいのですが、それ以外に、発表スキルの向上にも役に立つと思います。
日本大学航空宇宙工学科の魅力は?
先ほどの航空機構造設計製図もそうですが、他のところでは学べないカリキュラムが魅力のひとつです。未来博士工房や航空宇宙工学工房演習に参加すれば、早くから専門的な学問や活動を体験することができます。これは卒業研究を行う研究室を選ぶのにも役立ちます。
私は未来博士工房・日大ロケット研究会(※5)に所属していました。モデルロケットの打ち上げを行う工房です。はじめは先輩に教わるばかりでしたが2年生のときに自分たちで取扱方法を検討して、GFRP(※6)の機体を作製できるようになりました。打ち上げのライセンスも取得できました。
一方、いわゆる4力学(工業力学、材料力学、流体力学、熱力学)についてもしっかり身につけることができ、英語で発表する機会もあります。基礎がしっかりしているところも魅力だと思います。
次に、大学院に進学してよかったのは、やはり自分の研究を一から作り上げていくという経験ができたことです。自分の研究に使う実験装置は、自分でいろいろな企業や、他学科(物質応用化学科)の先生にも問い合わせました。実際に会社や研究室の見学をさせてもらったこともあります。
もちろん研究には難しさがあります。実験がうまくいかず、初めから考え直したこともあります。それでも、そんな苦労のおかげで成長できたと思っていますし、社会人になってもこの経験が活きると思います。
将来の目標・夢は?
博士前期課程修了後は自動車分野に就職します。
就職活動はスムーズでした。採用試験の面接では、大学で頑張ってきたことを、発表資料を作って発表しました。主に研究について発表したところ、面接官に詳しく聞かれましたが、きちんと答えることができました。講義や研究で経験してきたことが役に立ったと思っています。
配属後は生産技術に携わることになります。これまで勉強してきたことを活かして頑張ります。
入学を目指す高校生へ
航空宇宙工学科ではいろいろな体験をすることができます。工学の知識を総合的に学ぶことができるし、自分の発想から実際にモノを作ることもできるんです。ぜひ皆さんも航空宇宙工学科に来て、ここでしかできない学びを体験してください。
- ※1
- 鳥人間:航空宇宙工房(未来博士工房)で実施される活動のひとつで、人力飛行機プロジェクト(日本大学理工学部航空研究会)のこと。毎年琵琶湖で行われる鳥人間コンテストへの参加で知られる。2021年現在、ディスタンス部門で学生記録を保有している。
- ※2
- 衛星開発:航空宇宙工房(未来博士工房)で実施される活動のひとつで、衛星開発プロジェクトのこと。これまでに複数基の衛星打ち上げに成功している。てんこう2が2022年度に打ち上げ予定。
- ※3
- 飛び級制度:学部を4年で卒業してから博士前期課程に入学するのが一般的だが、学部3年修了後、4年生にならずに博士前期課程に入学できる制度。この制度を利用するためには厳しい条件が課される。
- ※4
- 航空機構造設計製図:航空機の構造設計に必要な考え方、知識・能力を養成する。実際に設計計算を行い、航空機の計画図を作成する。
- ※5
- 日大ロケット研究会:航空宇宙工房(未来博士工房)で実施される活動のひとつ。モデルロケットの打ち上げを通して、ロケット工学を実践的に学ぶ。これまでに種子島ロケットコンテストで2回企業賞を受賞している。
- ※6
- GFRP:ガラス繊維強化プラスチックの略で、軽量で強度が高く、自動車や航空機等の部品として広く採用されている。