定在音場におけるTriple Flameのダイナミクス

本研究は,燃焼器内で圧力と熱発生の相互作用によって引き起こされる燃焼振動と呼ばれる現象が生じた際の火炎のダイナミクスを明らかにすることを目的としています.ジェットエンジンやロケットエンジンで利用されている連続燃焼器では火炎は保炎されてエネルギーを生み出しています.保炎された火炎の最上流ではTriple Flameと呼ばれる予混合火炎と拡散火炎が共存する火炎が形成されており,その伝播特性が火炎の安定性に大きく寄与します.

予混合火炎とは,燃料と酸化剤が混ざった混合気中に形成される火炎,拡散火炎は燃料と酸化剤の境界中に形成される火炎です.ジェットエンジンやロケットエンジンでは,燃料と酸化剤が別々に燃焼器内に供給されます.そのため,燃料と酸化剤の境界ではそれぞれの濃度が連続的に変化する混合層と呼ばれる不均一場が形成されます.火炎の上流先端は燃料が混合しているため予混合火炎が,下流では予混合火炎帯で消費しきれない燃料と酸化剤が拡散火炎を形成します.

2012年の装置開発でスタートした本研究は,開始当初は主に火炎の形成位置などに関する静的な性質を明らかにすることを目的としました.スピーカにより定在音場を生成させて振動場の火炎を模擬し,直接撮影,シュリーレン撮影等で火炎の形成位置や混合層の形状を観察しました.その結果,音圧の上昇に伴い形成位置が上流へ移動することを発見し,混合層の形状観察と併せてモデル化を行いました.

2015年ごろからは機械学習を利用した低次元化手法を取り入れ,OH自発光及びアセトンPLIF法等で観察した火炎を固有直交分解(Proper Orthogonal Decomposition: POD)によるモード分解や教師なし学習の一つである深層自己符号化器(Deep Auto-Encoder:DAE)により,2次元または3次元の低次元潜在空間(相空間)に火炎のダイナミクスを写像することで支配的なモードの特定等を試みています.

Triple Flameの自発光画像(正面)
Triple Flameの自発光画像(側面)

平面レーザー誘起蛍光法(PLIF)により可視化した振動中のTriple Flame

Snapshot PODによる振動中のTriple Flameのモード解析