しんえん2

深宇宙通信実験機「しんえん2」

「しんえん2」は深宇宙通信技術の確立,超軽量衛星構造の開発技術確立を目的とした50cm級の小型探査機です.2014年12月3日に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」の副ペイロード(相乗り)として,月以遠の深宇宙へ放出されました.

1.目的

①月軌道(約38万㎞)付近における地球ー宇宙機関の相互通信

月周回軌道上に月面探査ロボットを投入する技術,月サンプルリターン技術などの月ミッション実現のための基礎技術の獲得を目指します.

例えば,月軌道上にある探査ロボットなどを動作させることを想定し,所定の距離に達したときに地上からスケジュールプログラムを送り宇宙機に記憶させた後,スケジュールを起動してスケジュールに従った動作を行わせ,動作結果を地上に送り返します.

②約300万㎞の深宇宙に至る超小型探査機との通信技術を確立

月面反射通信のノウハウを応用し,深宇宙での宇宙機の動作状態の確認を行います.

月軌道付近までは,アマチュア無線業務に供する宇宙機搭載通信装置 (トランズポンダー系通信装置)を用いて広くアマチュア無線局による相互通信を行います.宇宙軌道以遠では,宇宙機から送信されるテレメトリデータおよびモールス信号によりできるだけ遠距離での信号検出実験を行います.

③炭素繊維強化熱可逆樹脂(CFRTP)による宇宙機の製作と宇宙利用実証

金属材の溶接と同様に複合材を溶着接合できる炭素繊維強化熱可逆樹脂CFRTPを世界で初めて宇宙利用します.このCFRTPを用いることでボルトやリベットなどの金属ファスナー使用を劇的に減らすことができます.これにより,衛星の軽量化,構造信頼度の大幅向上を実現できます.

また,「ほどよし衛星」の研究成果を積極的に活用しました.しんえん2の構体はCFRTPを利用しており,樹脂はPEEKを採用しました.

④地球からバン・アレン帯を経て月に至る宇宙空間,およびそれ以遠の宇宙放射線の種類と分布の計測

しんえん2には深宇宙空間における放射線計測を行うためのセンサーを搭載しています.この放射線センサーは,米航空宇宙局NASAのジョンソン宇宙センターテキサス州立のPrairie View A&M Universityよびネバダ州立大学(The University of Nevada)によって開発されました.

このセンサーを用いて地球からバン・アレン帯を経て月に至る宇宙空間,およびそれ以遠の宇宙放射線の種類と分布の計測をします.

2.概要仕様

直径約500mmの準球形状であり,周囲は太陽電池で覆われています.実験機は,構造部,熱制御部,衛星制御部,通信部,電源部のバス系,およびミッション部から構成されています.

サイズ:H465×W500×D500mm以内
質量:約17.8kg
通信:145MHz(受信)、457MHz(送信)

外観イメージ

機器構成図

しんえん2

しんえん2プロジェクト(鹿児島大学&愛知工科大学)支援サイト
http://www.shin-en2.jp/